FLORAL DIARY

イギリス買付日記⑤

大きなフェアのあるリンカーンでは、いつもお世話になっているお宿の予約が今回は取れず、バスキッチン付の家を借りることにしました。一見一軒家ですが、Semi-Detached 式住宅と言って、一つの家を半分に割ったような一方の壁を共有する左右対称の2軒の住宅です。

Detached Houseは、「分離している」という意味で、文字通り一軒家のこと。2軒が一つになったSemi-Detachedは、イギリスでは一般的な住宅形式です。

今回お借りした家は、2階の壁と外ゲートを共有し、ガレージ、パーキングスペースは隣合っています。写真はガレージですが、手前がこちらのガレージで、奥がお隣。車の右側に素敵なお家が建っています。こんな風に、買付の荷物は家に持ち込まず、車で作業をしてしまいたい私にとっては、道路に面していないパーキングスペースがあるのは防犯上理想的でした。

 

宿泊施設としてオンラインにも公開されているので、お写真を載せますが、このような素敵なベッドルームが3部屋と、快適なリビングルーム、機能的で可愛らしいキッチン、バスルームが2つついていて、2家族ぐらいで泊まっても充分な広さです。それでも一泊の宿泊料はロンドン市内の普通の三ツ星クラスのお部屋一部屋と同じくらいなのです。

「お隣に住むのは、おじいちゃまカップルで、二人共90歳近いご高齢だけど、お元気でとてもいい方だから、挨拶に来てくれると思うけど、心配いらないよ。」とお借りした家のオーナーに言われていたのですが、買付の旅で、早朝から夕方まで外出なので、お目にかかる時間はないかもと思っていたのですが、到着した翌朝から必ず朝は出てきて見送って下さり、夕方はお帰りと迎えてくれ、少しずつおしゃべりするうちに、そのSemi-Detachedのもう一方であるご自宅に招かれることにまでなったのでした。

外観は当然全く同じなのですが、私たちがお借りしたお宅は、写真にあるように現代風の内装。

一方彼らのおうちは、重厚感のあるクラシカルでいて温かみのあるインテリア。窓辺の素敵なキッチンには小さなダイニングテーブルが置いてあり、そこで毎日2人でおしゃべりを楽しみながら食事をするのだとか。

とても素敵な陶器の壺がいくつか置いてあるのが印象的で、キッチンで使ったり、大きなものは、お掃除の布巾入れになさったり生活に密着してお使いの様子だったので、とても素敵ですねと言ったところ、かつてポタリー(窯)を経営して、これは彼が作ったんだよ。とのこと。

今から30年以上前のこと、その地は海辺のリゾート地として栄え、著名人なども集う有名な場所だったとのこと。イギリスの小さな窯が次々と閉鎖に追い込まれ、大きな窯に統合吸収されて現在に至る事は知っていましたが、サッチャー政権の政策によることが大きかったことなど、当時の貴重なお話を色々聞かせてくださいました。

1980年代に閉窯してからは、ピアニストとして活躍したそうで、壁に飾られていた当時の宣材写真はまるで往年の映画スターのような輝きでした。

色々なお話を伺いながら、ピアノを聞きながらワインとお茶までご馳走になり、たまたま買付に来て、お隣に宿泊することになっただけでしたのにご縁というものはあるのだなぁと不思議な思いでした。

 

Semi-Datached Houseで、隣が、知らない人が出入りする宿泊施設になってしまったというのは、普通に考えるとストレスのように思うのですが、高齢になり、旅行をすることも出来なくなってしまったので、色々なところから来る人とおしゃべりをするのを楽しみにしているのだそう。

別れ際に、「また来年ね、早く来ないと僕たちもうあの世だよ。」などと冗談を言いながら、そんなに気に入ってくれたならと持たせて下さったのが、上の写真のエッグカップです。私は卵はボイルドエッグ派ではないので、エッグカップは卵には使わないのですが、形が可愛らしく、デザインも可愛らしいものが多いのでついつい集めてしまうものの一つでもあります。お花を入れたり、ちょっとしたアクセサリー置きにしたり。大切な思い出の品となりました。

食器なども素敵だったでしょうと思い、もしかしてストックをとっておいてあったりするのかなと伺ってみましたが、閉窯の際に全て手放したとのこと。

とても残念。

帰国してからネットを検索してみましたら、60年代当時の窯の様子を取材した新聞の記事を見つけました。若かりし頃のお二人の写真もありました。職人としてろくろを回している写真やオーナーとして窯を紹介している写真も。

後世に残る名窯ではなかったのかもしれませんが、世に送り出した作品の数はたくさんあった筈なので、もう少しすると、Vintageとして、もっとするとAntiqueとしてまた市場に出て来るかもしれませんね。

彼らはそんなことは全く考えていないようでしたが。

実は、イギリスのe-bayで彼らのポットを一つだけみつけました。近くの町からの出品でした。こうして知らないところで作品は残っていきます。

2 Comments »

  1. イギリス買付日記⑤ 楽しく読ませて頂きました。
    今回の滞在は、Semi-Detached 式住宅との事、とても素敵な出会いと
    お家で、センスも抜群 
    りんちゃんママのご趣味にマッチした素敵な時間を過ごされたようですね。
    私も又イギリスに行く機会があったら滞在は是非、Semi-Detached 式住宅を
    検討したいです。
    お写真のエッグカップの色目(温かみのあるグリ-ンで作者の方のお人柄が作品にも出るものですね)形もグッド
    お会いした時に、又お話聞かせて下さいね。

    Comment by 大屋 久美子 — 2018年3月14日 @ 7:23 PM

  2. ありがとうございます。B&B、ホテル、マナーハウスなど色々な宿泊の選択肢がありますが、
    旅の目的や気分で変えられるのが楽しいですね。

    エッグカップ素敵ですよね。窯が残っていないのが残念です。
    またお目にかかれますのを楽しみに致しております。

    Comment by floralantiques — 2018年3月16日 @ 11:19 AM

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